自己紹介を兼ねた文章をまとめていたのですが、
子どもの頃のことを書いていたら、鮮明に思い出した「味」の数々。
お彼岸だからでしょうか・・・
思い出すのは不思議と亡くなった父方の祖父母のこと。
祖父母は病気でそれぞれ入院し、その後寝たきりとなり、亡くなってからもう随分と経ちます。
でも、その「味」が、わたしのどこかに刻まれているのです。
祖母が打ってくれるうどんの喉越し、
お正月につくお餅で煮たあんこを包む「あんぴん」をストーブで焼いて食べた時の香ばしさ、
手もみでつくる緑茶のむせるほどの香りと深い甘み、
渋が抜けたかどうかおそるおそる食べる干し柿のとろとろした食感と素朴な甘さ、
散歩しながら食べる野いちごの甘酸っぱさ・・・
数えきれないほどの「味」はその時の風景と共に残っていて、
その頃には気づかなかったのですが、
今となっては、そのほとんどが、もう2度と味わえないご馳走です。
「お母ちゃんはすぐにあんこに塩入れる!!!」
そう、おばさんと祖母が喧嘩をしていた思い出も、
ちょっとしょっぱい、ぼたもちの味とともにあります。
そして、祖母は病気で手がうまく動かなくても、
子供や孫たちのために、うどん打ってくれてたんだなぁとか、
祖父はぶっきらぼうだったけどみんなのために畑仕事がんばってたなぁとか、
今になってお腹の底からじんわりと感謝の気持ちが湧いてきて、
なんだか涙が出てきます。
自然とともにある、というよりは、自然の中にあるあの場所。
今は誰も住んでいないし、とても不便な場所なのだけれど・・・
ふと、わたしはあの場所をいつか「誰でも帰れる実家」のようにしたいなぁと思いました。
実家はひとつでなくていいし、さらには実家がない人の実家になれればいい。
都会に住んでいる人も、週末にふらっと遊びに行って、
都会では体験できないことを体験したらいい。
イノシシや猿がたくさんいるような場所だし、
何年かかるかも検討がつかない。
どうやったらいいのかはもちろんわからない。
それでもなにか、わたしの原点があそこにあるような気がするのです。