「OLさんなんだね。」
オーエル、オフィスレディか…そう呼ばれると、なぜか胸の片隅がきゅっと縮こまる。
確かにわたしは「オフィスで働く女性」だけれど、その響きに、どこか気楽で無責任な雰囲気が漂うように思えて、「わたしは違う」という気持ちが湧いてくる。ただテレビドラマの印象が強いせいかもしれないけど。
そういえば、こんなにがんばっているのに、という思いは、いつもわたしの中にある。がんばったらがんばっただけ、認められるとか、報われるとか、そういうものではないんだな、という諦めみたいな感覚は社会人5年目にもなれば、誰でも持つものなのだろうか。
ただ、がんばることでしか、現状を変えることができないこともどこかでわかっていて、いつか報われる時のために、できることをがむしゃらにやるしかないのだ。がんばっていれば、時々はがんばってよかったな、と思えることがあるから。
たまには自炊もしなきゃ、とは思いつつも、結局今日も気づけばこんな時間。家に着くのは10時過ぎかな。帰ったらご飯を食べてシャワーを浴びて、すぐに寝たい。
コンビニに寄るか、お弁当屋さんに寄るか…スーパーのお惣菜を買って帰るのすら面倒な時には、たいていはこの二択だ。料理をするくらいなら、少しでもゆっくりテレビを観る時間が欲しいと思ってしまう。
そんなことを考えながら40分、今日も座れない電車に揺られる。
駅から家までの道のりにあるお弁当屋さんの前には所在ない感じのサラリーマンが3人。なんとなくその中に入りたくないような気がして、通り過ぎていつものコンビニへ。
よく買う電子レンジで温めれば食べられる冷凍のチャーハンや、焼き鳥をカゴに入れた。受け皿付きだからお皿もほとんど使わない。なんとなくそれだけじゃ足りないような気がして、新商品のアイスと明日の朝ごはんにとパンも買う。
家に着くと、電気・テレビの順にスイッチを入れ、買ってきた食事を電子レンジにかける。
今日は金曜日。明日は休みだし、用事があるのは夕方からだから遅くまで寝てよう。
牧田月子、27歳。
営業の仕事は大変だけど楽しい。売り上げを上げないといけないプレッシャーと受注できた時の喜びは比例するのかもしれない。受注したらしたで、新卒採用向けのHPをつくるための取材や撮影も始まって忙しくなる。逆を言えば、受注できなければ、暇になってしまうのだ。
コンペの時期を過ぎれば、どんなに企業に営業をかけても、無駄になってしまう。もう予算が残っていないことが多いからだ。
予算を達成できないことよりもなによりも、暇になるということが一番怖かった。仕事がないということは、がんばる余地すら与えられていないということで、それはわたしにとって、どんなことよりも辛いことだった。
提案ができる、企画書が作れる、企業訪問ができる。そういうひとつひとつが、自分にとっての希望のようにも思えるのだ。
もっと、もっと、がんばらなくては…そう思うのと同時に、これはいつまで続くのだろう、という気持ちも出てくる。いつか、ゴールはやってくるのだろうか。
それを考えると、いつも胸の中に黒い靄がやってきたような、ちょっと暗い気分になるから、そんなことは忘れて、貴重な休日を楽しもう、と月子は小さく決意した。
つづく
フィクションですw
ほんとに??
えぇ、ほんとですw
というわけで、二冊目の本を書いています。
・・・古傷えぐる感じで書いてるので、しんどい作業だわw
月ちゃんヨシヨシ。
ここからどうやって「食」の話になっていくのか・・・お楽しみに!!!
つづきはこちらから魔女の食卓第一章