魔女の食卓〜第5話「わたしのやりたいことって?」

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それにしても、こんなに深い話をあかりさんとするのははじめてだ。

「今になって考えたら、アポの予定だったお客さんとかと会ったら、色々大変なのにね。でも、そういうのがどうでもよくなるくらい、どうしても行きたかったのよね。

それで、喫茶店に着いたら、学生の時と何も変わってなくて、カレーとコーヒーをセットで注文して。

そこの喫茶店って、古いお店なんだけど、すごく綺麗にしていてね。お水の入ったグラスもいつもぴっかぴか。いつ行っても、どんなに忙しくても、やさしそうなマスターと店員さんが丁寧に出迎えてくれるの。

美味しいカレーを食べて、笑顔で接してもらっているうちに、元気が出てきたの。

それでね、ものすごく久しぶりに、とっても幸せな気分になったの。」

聞いているだけで、美味しそうだ。
相槌を打ちながら、月子はいつの間にか自分とその時のあかりさんを重ねていた。

幸せって、なんだろう。

月子の心の中の疑問に答えるように、あかりさんは話を続ける。

「それってね、コンペで勝って嬉しい!とか、そういう感じじゃなくって、もっとずっとやわらかくあたたかい何かで心が満たされた感じでね。

自分の一番食べたいものを食べるだけで、こんなに満たされるんだ、って驚いて。
それで、なんだか泣けてきちゃったのよ。」とあかりさんは、悲しそうな笑顔を浮かべた。

「食べたいものを食べる、ですか。」と月子が言うと、

あかりさんは、そう、と頷き、
「それで、思ったの。
あぁ、わたし、今まで何やってたんだろう?って。

わたしはわたしに食べたいものすら、食べさせてあげてなかったって。
自分の気持ちをいつもいつも無視してたって。

からだが動かなくなるくらい悲鳴をあげて、
死んじゃうとしたら?まで考えないと、自分の食べたいものすらわからなくなってた。

だからね、決めたの。
これからは、もっとちゃんと自分のやりたいことを自分にさせてあげよう、って。」

月子は、考えた。

「ねぇ、月ちゃんはさ、これから何がしたいの?やりたいことって何かな?」

「わたしのやりたいこと…」

これを聞かれるのが一番苦手だった。

具体的に、これをやりたい、ということが無いのだ。

でも、ずっと誰かの役に立ちたいと思って生きてきたような気がする。
役に立つことは好き。
だけど、役に立てなかった時の

もちろん、興味があることは常に何かしらあるけれど、じゃあそれを一生やっていきたいかといえば、そういうわけではない。

じゃあ、わたしは何のために頑張っているのだろうか?

いつまで、そうやって頑張るのだろうか。

考え込んでいると、あかりさんがいつの間にかわたしの目の前に来て、
わたしの両肩をがしっとつかんで、前後にぶんぶんと揺すりながら、

「月ちゃん!!それ、麻痺してるわ。」と目を見開いて言った。

「麻痺…ですか?」

「そう、麻痺。幸せに生きていくためのセンサーが壊れて麻痺してる!!!」

「え、でもわたし、今でも結構しあわせですよ。」

「うんうん、そうかもね。でもね、月ちゃん。月ちゃんから頑張ることを取り上げたら、どうなる?」

「え…そんなの想像つかないです。」

「怖いでしょ?」

「…はい、怖いです。」

「月ちゃんは、

「そんな時はね、月ちゃん。まずは…ごはんを変えよう!!」

「え!?ごはんですか?」

月子は思わず、うわずった声で聞いた。

「そう、ごはん。ごはんで訓練するの。」

「訓練・・・ですか」

すると、あかりさんは立ち上がって、すーっと息を吸うと、
「元気ですかーーーー??」と声を張り上げた。

「元気があればー!!!」と低くて大きな声を出した。

「えっ!?」と月子が戸惑っていると、

「元気があればーーーー!!?」とさらに声を張り上げた。

月子が面食らっていると、

あかりさんがしびれを切らして「なんでもできる!!」と声を張った。

これはもしや・・・

すると、あかりさんは、そのままの勢いで、
「元気がないと、なんにもできないでしょ!!!」と、すごい気迫でいうので、月子は思わず、
「はいっ!」と返事をした。

あかりさんはにこっと笑って、
「月ちゃん、本当に、食べたいものを食べるのよ。」と言った。

そうだった、あかりさんはプロレスファンなんだった。
あーびっくりした。


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